第207話 Mー14 終局

 ユウとスピカは仲間を失いショックを隠しきれなかった。


 そしてしばらくは呆然としていた。


 先に立ち直ったのはユウだった。やはり死ぬことはないと分かっているからだろう。


「スピカさん」

「…………」

「スピカさん」


 二度目の呼びかけでスピカは反応した。


「なんで?」

「…………」

「なんでスゥイーリアが。あいつ仲間想いで本当にいい奴なんだよ。強いしさ。綺麗だし、カッコいいし、そして自慢もしないし、優しいし、それなのにどうして? どうしてあいつが? あいつが何かしたの? ねえ?」

「落ち着いて下さい」

「そ、そうだね。ごめん。取り乱して」


 スピカは自身の体を強く抱きしめた。


「いえ、少し休んでください。俺が見張りをしておきますので」

「ありがと」


  ◯ ◯ ◯


 ユウが見張りをして十数分後に敵から襲撃を受けた。


 スピカは多少スゥイーリアの件について立ち直れてはいたが、戦闘で無駄な動きが大きく、する必要のない広範囲系の攻撃を繰り出して暴れていた。


 まるで怒りと心の奥の鬱憤を晴らすように。


「ここもバレたと思いますし、移動しましょう」


 戦闘終了後もどこかぼんやりと棒立ちをしているスピカにユウは言葉をかける。


「スピカさん」

「……うん。ごめん。行こうか」


 二人は洞穴を離れ、西へと移動する。


「昨夜はさ、どうして取り乱さないのかって聞いたけど、やっぱ取り乱すよね」

 スピカはぼんやりと前を向いて言う。


「ですね」


 慰めの言葉が見つからず、ただ同意の言葉をユウは告げる。


「そういえば何時に終わるんだっけ?」

「13時です」

「そうだった。それまでは頑張らないとね」


 と生気なくスピカは言う。足取りもとぼとぼとしている。


  ◯ ◯ ◯


「レオ、アリスから連絡は?」

 ケイティーはレオに聞いた。


「いや、ない」

「他のやつにも問い合わせみんたんだけど、誰も見ていないそうだよ」

「そうか」

「通信障害?」

「ここでか?」

「連絡に応じれない問題とか? 戦闘中とか?」

「昨夜からか?」

「もしくは通信をオフしているとか?」

「……なくはないが……」


 しかし、レオは言い表せない不安を胸に抱いていた。


  ◯ ◯ ◯


 そして13時になりイベントフィールドに残っていたアヴァロン・タイタンの両プレイヤー達は元の島へと帰還された。ある者はギルドの拠点。またある者は宿舎へと。


 セシリアは手を握って祈っていた。全員無事でありますようにと。皆がこのパーティーのメイン住居として買ったこの家に戻ってくると。


 けれど、残念なことに戻ってきたのはユウ一人だった。


「アルクは? ミリィは?」


 セシリアは時間差だと思いつつ聞く。


 その問いにユウは静かに首を振る。


「……え?」

「ごめん」

「嘘……だよね?」

「……」


 ユウはこうべを垂れた。


  ◯ ◯ ◯


 ブリーフィングルームに転送されたレオパーティー。各々がやるだけのことはやったと励まし労っていた。


「おい!? アリスはどこだ?」


 そんな中、レオはパーティーメンバーに問う。


 だが、誰も答えられなかった。

 レオは端末を使い、アリスに連絡をするも……繋がらなかった。

 そこへ軽快なポップ音が端末から鳴る。

 それはロザリーからの音声メッセージだった。


『はいはーい。皆さーん、お疲れ様でーす。今回はお約束通り、両プレイヤーから若干名を解放させていただきました。では皆様、今回はこれにて失礼しまーす。次のイベントをお楽しみにー』

「レオ、まさかアリスは解放された?」


 パーティーメンバーの一人が聞いた。


 レオは問いには答えず、もう一度端末でアリスへと連絡する。

 呼び出し音が鳴る。何度も。


「レオ……もうアリスは解放……されたんだよ」

「そうか」


 だが、まだ素直には喜べない。

 なぜなら本当に解放されているかどうか分からないからだ。


 今は信じるしかない。


 アリスが解放されたのだと。

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