第5話

 ――幽楽町。


 それが俺達が暮らす町の名であり、俺達があの人から受け継いだ場所。守り、人間と共存出来る町。そういう町は、何処を探してもここだけかもしれない。

 妖怪、魔、鬼……総称してと呼ばれてる存在が、普通の人間と同じように暮らしている奇妙な町だと印象を受けるだろう。だが、これがあの人が創った町だ。そして俺達が守るべき場所である。


 「守るべき場所、か」

 「何を浸っておるのじゃ、ハヤテ」

 「綾さんじゃないっスか、ご無沙汰っス」

 「総大将としての威厳も無いのう。そんな風貌では、ワシらともかく他の者に示しが付かんのじゃないか?」

 「俺への信頼は、ある程度で十分っスよ。それよりも綾さん、さっきの会議で出た議題……どう思うっスか?」

 「幽楽町以外で出現した餓鬼、のう。不思議でも無いが、奇妙ではあるのう」

 「陰陽師連中が、この町に結界を張ってる事は知ってるんスけどねぇ。まさか他の町でも出現するとは思わなかったっていうのが本音っスね」

 

 そうなのだ。ここ幽楽町とは別の町で、餓鬼という化け物が出現している。餓鬼とは……人間の負の感情を好み、人間を喰らって成長する化け物の呼称である。

 だがしかし、陰陽師という人間の中でも俺達と戦える存在から聞いた話がある。その話によれば、この幽楽町以外に出現しないように結界を張っていたはずだという話を聞いていたのだ。

 だからこそ、先程の会議で出た議題は奇妙と感じざるを得ないのだ。


 「そういえば、姐さんはどうしてるんスか?」

 「刹那の事かい?刹那なら、丁度調べ物がある言って出掛けておるよ。護衛は魅夜と烏丸からすまに頼んでおるからのう。心配は無いじゃろう」

 「だと良いんスけどねぇ」

 「心配か?」

 「魅夜の事だから心配は無いと思うっスけど、問題は茜さんの方っスね」

 「あぁ、あれは時間の問題じゃろうな。ワシらは待てば良い。茜が一歩前に進む事をの」

 「そうっスね。俺達は影の存在っスから、町の平和を守るだけっスね」

 「そういう事じゃ。どれ、ハヤテ……一局だけどうじゃ?」

 「お手柔らかに頼むっスよ」

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