第224話

 黒いフードを深く被り、白い仮面で顔を隠す怪しい人物。それを見れば、誰だって警戒するだろう。実際、私だって警戒している。

 いや、警戒しない訳がないのだ。何故なら、妖怪としての私が感じるのである。目の前の人物からは、膨大な妖力と実力差を。


 「誰っ!!私に何の用っ」

 『……』


 圧倒的な実力差がある。それでも、引くという選択肢を私は選ばなかった。何故だろうか。目の前の存在の気配には、何処か懐かしい気配を感じざるを得ない。そう思っていた時、それは動きを見せた。

 

 「っ!?」


 戦闘行為ではない。その者が取った行動は、片膝を地面に付けて頭を下げた。敵意を感じなかったが、私に敬意を払う者は多くない。それを理解した時、その者は言葉を発したのである。


 『「お久し振りです、姫巫女様。俺の事を覚えているでしょうか?」』

 「……」


 聞き覚えのある声。その声を聞いた時、私の脳内である人物の名前が浮かんだ。私が無意識に、咄嗟に浮かんだその者の名前を口にしたのであった。


 「……酔鬼すいき?」


 そう呟いたと同時に、答えるようにその者は仮面を外して口角を上げた。

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