第223話

 ――数時間前。


 焔鬼が率いる餓鬼と黒騎士が幽楽町を攻め込む頃、茜はに誘われるように足を運んでいた。微かに感じる妖力には、の記憶に覚えがあったからだ。

 その気配に釣られて辿り着いたのは、人の手も加わっていない舗装されていない山道だった。何処にでもあるような自然な山道だが、茜にはその場所に見覚えがあるように感じていた。


 「ここって……」


 ザザ……ザザザ……。


 「っ!」


 脳内に走ったノイズと共に頭痛が襲い掛かったが、茜は薄っすらと見えた景色に見覚えがあった。自分を庇う者と取り囲む者の姿は、曖昧な記憶でも確信する事が出来た。


 「ここは……私がほーくんに、忘れさせられた場所だ」


 そう呟いた途端、背後から気配を感じた茜は武器を構えた。そこに居たのは、仮面を付けた黒ローブに身を包んだ何者かが立っていたのである。

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