第12話

 人間は嫌いだけど、半妖はんようは嫌いじゃない。そんな事を考えながら、魅夜は自分の教室へと戻る。廊下を進んでる間、途中で見知った顔が視界に入った。

 魅夜は昼休みがまだ時間がある事を確認し、その見知った顔の下へ早足に近寄った。


 「刹那……」

 「あぁ、魅夜さん」

 「刹那、仕事は終わったの?」

 「ええ、少し時間が掛かってしまいましたけれどね」


 魅夜と刹那が言葉を交わし始めた所で、周囲の生徒がざわざわとし始める。何故なら、刹那こと「ひいらぎ刹那」という女子生徒は注目を浴びている。鬼組幹部という事もあるが、女子生徒の間では憧れの対象となっているのが理由である。

 そしてその向かいに居る魅夜も、刹那の義妹として注目を浴びている。刹那は女子生徒に人気があり、一部の生徒でファンクラブも作られている。魅夜も同じくだが、女子生徒ではなく男子生徒のファンが多い。


 「ここは少し騒がしいですね。場所を変えましょうか?」

 「うん、そうする」

 

 そう短く言葉を交わした瞬間、刹那は目を細めて手の平に息を吹いた。そうした時、刹那と魅夜以外の生徒の動きが止まった。いや、正確には遅くなったと言った方が良いだろう。

 それを見た時、魅夜は刹那に首を傾げながら問い掛ける。


 「何をしたの?」

 「簡単な幻術です。まだ私達があの場に居ると思わせていますので、この隙に移動してしまいましょう。持って数分ですので、早く移動しましょう」

 「分かった。(簡単な幻術って、妖術の中でも幻術が出来る妖怪は少ないのに……雪女の刹那が幻術なんて出来るの?)」


 そんな事を考えつつも、騒がしい場所が嫌いなのだろう。魅夜は早々に廊下を歩かず、窓を開けて刹那に言った。


 「ここから行こう」

 「はぁ……仕方ありませんね」


 窓枠を蹴った魅夜は再び屋上へと戻り、刹那もそれに続いて屋上に着地する。幻術も解けたらしく、生徒達はキョロキョロと彼女達の姿を探している様子だった。それを見下ろしながら、魅夜は刹那に問い掛ける。


 「それで、調べ物はどうだったの?」

 「そうですね。どうせ魅夜の事です。この後の授業はサボるのでしょう?屋敷に戻って、皆の前で話します」

 「分かった。着いて行く」


 そう言って彼女達は、屋上から屋敷へ目指して移動を開始した。屋根伝いに移動する彼女達の姿は、生徒達には見えていないと思っていた。

 だがしかし、その生徒の中に一人だけ彼女達の事を眺めていた者が居た。


 『――私です。はい……見つけました』

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