第13話
――鬼組総本山、神埼邸。
昼間だというのにもかかわらず、既に仄暗い雰囲気に包まれている。町に住む者達の中では、その屋敷の前を通る事を避ける者も居る。だが町を護っている事は周知の事実であり、人々は
そしてその事は、鬼組の者達も知っている。噂というのは、そういう物だ。
「ふっ……はぁあ!!」
屋敷の庭で一人、二本の刀を振るう掛け声が響く。地面へ滴る汗を散らしながら、殺気にも似た集中力で双剣を振るっている。その者は、現鬼組総大将代理であるハヤテである。
そんな彼の姿を見つけ、微かに気配を消した状態で声を掛ける者が居た。鬼組幹部であり、妖狐の杏嘉である。
「おぉハヤテ、精が出るじゃねぇか」
「……っ!」
「うわっと……あ、危ねぇだろハヤテ!反応出来なかったら死んでたぞ!!」
「申し訳ねぇっス!汗で滑っちまって、あはは」
「あははじゃねぇよ!!」
屋敷を支える柱の一部に突き刺さっている様子を見て、杏嘉は冷や汗を頬に伝いながら声を上げた。申し訳ないと誤魔化したような笑みを浮かべながら、ハヤテは縁側に置いていた手拭いを拾って汗を拭った。
そんな汗まみれのハヤテを見ていた杏嘉は、小さく「あっ」と言って何かを思い出した表情を浮かべた。
「……そういや、蒼鬼の野郎がお前を探してたぜ」
「蒼鬼がっスか?何の用っスか?」
「アタイが知るかよ。知りたきゃ自分で聞けば良いじゃねぇか」
「それもそうっスね。ちなみに聞くっスけど、蒼鬼が何処に居るかは……」
「知る訳無ぇだろ?」
「そうっスよねぇ~」
首を傾げながら、何食わぬ表情でそう言う杏嘉。そんな杏嘉の言葉を予想しつつも、ハヤテは手拭いを肩に掛けて屋敷の中へ戻った。
「探すのか?」
「そうっスよ。俺も個人的な用事があるのを思い出したんで、ついでっスわ」
「そうか。もし見つけたら念話してやるよ」
「それは有難いっスね。その時は宜しくっスよ」
「あぁ」
そんな言葉を交わしてから、ハヤテは手を上げただけで振り返る事は無かった。屋敷の奥へと消えるハヤテを見届けながら、杏嘉は背中に当たる風を感じながら振り返った。
快晴と呼ばれる程に良い
「何だ?この奇妙な気配は……」
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