第68話

 杏嘉と豹禍の妖力が衝突し合う中、杏嘉の憎しみに反応した餓鬼が移動を開始し始める。餓鬼は負の感情を好み、そしてそれを溜め込みストレスを抱える人間が好物だ。

 戦闘が長引けば長引く程、人間達も精神的疲労の影響でストレスを抱える事になる。それが無くとも、失敗や不安は人間関係が常にある世の中では溜め込まない人間の方が少ないだろう。


 「……ったく、あの莫迦狐バカキツネが。豹禍の野郎に煽られながら、自分の憎しみに答えてやがる。このまま長引けば、闇に呑まれるのも時間の問題だな」


 建物から建物へ、屋根を伝って移動する狂鬼。行く手を阻んでいた餓鬼の姿は無く、ただ道を邪魔する餓鬼を容赦なく薙ぎ払いながら移動を繰り返す。


 「憎しみは何も生まない。それは分かってるはずだろ、莫迦狐」


 狂鬼はそう吐き捨てて建物の屋根を蹴った。杏嘉の気配を追いながら、周囲にある気配を全て把握しようとする。すると先程まで杏嘉と共に行動していたはずの気配が、杏嘉より離れた場所にある事を察知した。

 そしてもう一つも気配も把握した狂鬼だったが、眉根を寄せてその気配を見据えるように睨み付ける。


 「まさか、あいつを黒騎士に戻したのかよ。何を考えてやがんだよ、あの人は」


 狂鬼はそう告げた瞬間だった。その睨み付けた先で大爆発が起き、爆煙が空へと昇って行くを見た。それと同時に感じたのは、弱まった妖力の気配だった。

 それを感じた狂鬼は、舌打ちをしつつも屋根を蹴ってその気配を確認しに行った。

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