第69話

 「覚悟は出来てるかぁ?九尾」

 「それはこっちの台詞だ。次は、殴るだけじゃ済まさねぇぞ」


 妖力が可視化出来る程にオーラとなっている杏嘉と豹禍。二人の衝突する妖力に中てられ、餓鬼達が続々と集まっている。それに気付いた杏嘉は、苛立ちを覚えた表情を浮べながら舌打ちをした。


 「っ、邪魔すんじゃねぇよっ!!雑魚共っ」

 「同感だな。ここは戦場だからなぁ、部外者は引っ込んでてもらおうか」


 そう告げた瞬間、互いに拳をぶつけ合う。だがしかし、すぐに同格だと分かった瞬間だった。距離を取ったと思えば、周囲に居る餓鬼を消滅させた。

 杏嘉はともかく、率いていた豹禍の行動に疑問を抱く餓鬼達。動揺と同時に怒りが表れ、餓鬼達は杏嘉と共に豹禍に拳を突き出す。


 『裏切リ者ガァァァァァッッ!!』

 「チッ……本当に邪魔な奴だなぁ。俺の言った事が聞こえなかったのか?あぁ?」


 餓鬼の拳を片手間で押さえた豹禍は、ギロリと睨み付けて受け止めた手に力を入れた。その瞬間、餓鬼の拳が血だらけとなって砕けた。それを見ていた杏嘉は、目を細めつつも警戒を解く事は無かった。

 何故なら、杏嘉は知っているのだ。豹禍という男が、どういう存在なのかという事を。


 「変わってねぇんだな。仲間を平気で裏切るその面、やっぱり殴るだけじゃ足りねぇな」

 「あぁ?俺が餓鬼こいつらの仲間?んな事いつ言ったよ?こんな役立たず共を仲間ねぇ……冗談だろ?」

 『グァァァァァァァァァッッッ!!!!』


 そう言い放った豹禍は、倒れた餓鬼の頭を鷲掴みにした。そして握り潰され、餓鬼の血が建物に飛び散った。やがて手にべったりと付着した血液を見つつ、豹禍は軽く手を振りながら表情を変えずに告げる。


 「俺に仲間なんて必要ねぇ。俺はただ利用するだけだからなぁ。例えばそうだな……――テメェの家族みてぇになぁ」

 「くっ……豹禍ぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」


 怒りを露にした杏嘉は、その場で思い切り掌底を突き出した。空気をそのまま押し出したのか、豹禍に向かって一直線に集束された旋風が巻き起こる。

 それを見据えた豹禍は、ニヤリと笑みを浮かべて呟くのである。


 「妖術、魔封牙まふうが

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