第182話
重く圧し掛かるような妖力が、姿を現した事を周囲の者達に伝わった。鬼組の面々は、戦いながらもその気配を感じていた。
共闘している杏嘉と魅夜も、双剣を振るうハヤテも、彼等の気配を辿って介入しようとする狂鬼も、同胞を手当てする鬼組の面々にも伝わっている。
「どうした?ハヤテ、余所見をしてる暇があんのかぁ?あぁ?」
「そんな余裕ないっスよ。けど、あんたも感じたはずっスよ?この妖力の主は、俺達の仲間の気配っス」
「それがどうかしたのかよ。確かに大した妖力だが、それだけだろうが」
「いやぁ……まぁ情けを掛けるつもりはないっスけど。一つだけ忠告っス」
「あ?」
「姐さんを怒らせたって事は、その人……死ぬっスよ」
その濃い妖力の主である刹那は、目を細めて目の前に居る魔鬼の事を見据えた。その視線を向けられた瞬間、魔鬼の全身が凍り付くような悪寒が走ったのだろう。目を見開き、冷や汗を頬に伝わせつつも身構えた。
「っ……(何なのこの気配。さっきとは別人じゃない!)」
「……」
冷ややかな視線を受けつつも、その威圧に負けじと魔鬼は身構え続けている。だがしかし、魔鬼は身動きが取れずに居た。いや、動く事は許されないと悟ったのだろう。
目の前に居る刹那の術中、という状態でもあるのは理解していたようだ。
「刹那さん……貴女、随分と気迫が違いますわね。いよいよ本気を出した、という事なのかしら?」
様子を伺う為、時間稼ぎの為に問い掛けた魔鬼。だが、それが失敗だった。
「――それは、私に言っているのですか?」
「はぁ?何を言って……っ!?」
言葉の意味が分からなかった魔鬼に対して、刹那は小さく息を吐いて冷気を出した。足元からやって来る冷気が、自分の足が凍っているのではないかと錯覚させる。
それを感じ取った魔鬼を見据え、刹那は冷ややかな声色で問い詰めた。
「たかが魔境の黒騎士風情が、気安く私に話し掛けないで貰えますか?」
「なっ、黒騎士を侮辱する気?……っ(う、動けない?)」
「動きたいのであれば、どうぞお好きに。まぁその代わり、貴女の足が砕けるのは間違いないですね」
ニコリと笑みを浮かべた刹那には、ただならぬ殺気に包まれていたのである。
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