第十四夜「氷の監獄」

第181話

 ――数百年前。


 天候が変わらない国があった。その国は春夏秋冬があるにもかかわらず、季節が一つしか存在しない国だった。だが国境を越えれば、境界線を越えたかのように冬の季節が終わる。

 まるで結界でも張られているのかと錯覚する程、その天候はとても違和感に包まれていた。その違和感の中心に居たのは存在……それが私であり、まだという名前はない。


 「お前がこの天候の原因か?」

 「駄目っスよ、アニキ。ただの妖怪でここまで影響を出してる奴は、大体の奴が理性を失ってるっス。話しが通じるかどうかは微妙っスよ」


 そんなある日、いつも通りの雪原の上を歩いていた時である。私の前に姿を見せた二人の男。片方は二本の刀を腰に下げており、もう片方は欠伸をしながら肩に刀を叩いている。

 だが対面した瞬間、私は警戒せざるを得なかった。何故なら、余裕を感じさせる男の方から得体の知れない妖力を感じたからである。


 「他人ひとの事を勝手に想像で語らないでくれますか?」

 「……どうやら、理性があるみたいっスね。どうしますか?アニキ」


 アニキと呼ばれる男に意見を求めた時、私は警告のつもりで先制攻撃を繰り出した。雪原を伝って、氷の柱を地面に走らせる。


 「っ!?(馬鹿な、そんな有り得ない))」


 だがしかし、完全に捉えたと思った矢先に私は目を見開く事になった。眼前にまで接近した氷柱は、確実に男達を捉えたと思っていた。

 しかしそれは勘違いで、当時の私は相手の力量を見誤っていたのだろう。アニキと呼ばれていた男は、一歩も動く様子もなく氷柱を砕いた。


 「アニキを攻撃したっスね?覚悟は出来てるっスよね――アニキ?」

 「まぁ待て、お前は手出しをするな。ここはオレがやる」


 それが彼……焔様との初コンタクトである。

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