第358話

 「己の技で世と共に包囲するとは……貴様、世と心中でもするつもりか?」

 

 この程度の包囲網で世を捕え続けられると思っているのか?と言いたげな目を向ける覇鬼。そんな視線を受けながらも、胸を貫かれている焔鬼はニヤリと笑みを浮かべて告げた。


 「そうだと言ったら、どうする?」

 「ハッ、貴様の叛転は確かに厄介かもしれん。だが、貴様とてその状態で何が出来る?よもや、死に逝くのを世に見届けてくれとでも言うつもりか?」

 「確かに、今のオレは虫の息同然かもしれない」

 「フッ、自覚しているのか。ならばさっさと……」

 「だがな、覇鬼。オレに何度も同じ言葉を吐かせるな。――オレは一人じゃない」


 焔鬼がそう告げた瞬間、拘束している覇鬼と焔鬼の上空から妖力の気配を感じた覇鬼。頭上を見上げ、遥か上空に居るそれを発見したのである。


 「(あれは……蒼鬼)くっ、貴様、さっさと離せ!」

 「離せと言われて、オレが素直に従うと思っているのか?」

 「ぐっ……ならば、貴様もろとも、周辺の妖怪共と共に滅ぶが良いっ」

 「(妖力が跳ね上がった。不味い、このまま時間を掛けたら……)――蒼鬼!!」


 覇鬼の様子に焦りが生じた焔鬼は、頭上から急降下する蒼鬼の名を呼んだ。

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