第357話

 「お前も随分とボロボロとなったなぁ、狂鬼」

 「うるせぇ……オレの事言えねぇだろが」


 酔鬼の言葉に目を細めた狂鬼は、酔鬼の事を睨み付ける。確かに互いに負傷しているが、致命傷を受けた訳ではない。まだ戦えると思っているが、それでもあの中に介入する事は難しいと感じざるを得ないのだろう。

 焔鬼の妖力と気配が変わっている様子に対して、魅夜は参加しようと考えているのだろう。しかし、その行動を酔鬼と狂鬼に止められている事に不満を覚えている様子だ。


 「焔鬼兄ちゃんの邪魔になるぞ、猫」

 「お前、もう焔鬼をそう呼ぶのを隠す素振りも無いんだな」

 「テメェは知ってるだろうが。つか、もう隠すのも今更だろ?……それで、どうするよ。介入したい気持ちは理解出来るし、オレも焔鬼兄ちゃんを手伝いたい気持ちは同じだ」

 「あの戦いに入れる奴が居るとするなら、姫巫女さんか桜鬼……それと蒼鬼ぐらいだろ」

 「そういや、その蒼鬼は何処だ?姿が見えねぇけど」


 そう言いながら、狂鬼は蒼鬼の姿を探す。酔鬼も一緒に探すが、魅夜はその様子を放置して黒い炎の中に居る焔鬼の様子を見守り続けていた。

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