第96話
――纏い。
それは黒騎士が自らの力に付けた枷を外し、より大きい力を使用する事が出来る状態の事だ。通常でも戦闘能力は高いのだが、それでも枷がある状態では制限が邪魔をする。
しかし、それはその枷という邪魔な物を排除する。妖力を完全解放し、更に高い戦闘能力を手にする事が出来る。その能力は黒騎士同士であれば、それを使用している際はそれでしか勝負にならない。
そしてそれは、黒騎士が持つ上限解放である。……はずなのだが、何事にも例外という存在は現れる。それが――狂鬼と対峙している戯鬼である。
「これがワタシの纏いだヨ。――纏い、
「どうしてテメェが、纏いを使える!テメェは黒騎士じゃねぇただの人形のはずだ!!」
「ワタシは人形であると同時ニ、当時の黒騎士の血液・細胞から生まれた存在だヨ?纏い程度を使えなくては、話にならないヨ」
そう。戯鬼は当時の黒騎士達によって生み出された存在だ。焔鬼、蒼鬼、剛鬼、妄鬼、蘭鬼、酔鬼……この者達の血液や細胞を駆使し、生み出された存在なのだ。そして黒騎士の中で纏いを使えない者は当時では存在しない。
……であれば、戯鬼が使えるのも納得のいく話だろう。それを証明した戯鬼を見据えながら、狂鬼は目を見開いて妖力を解放した。纏いは纏いでなければ対処は難しいから、通常状態では勝てないと悟ったのだ。
「纏い――鬼神・阿修羅」
「豊富な武器と優れた戦闘能力を持つその纏いハ、非常に厄介だネ。ンー、決めタ」
「――っ!?(見失った!?オレも纏い状態なのに?)」
目の前から消えた戯鬼を探すように目を動かす狂鬼。だがしかし、瞬時に間合いを詰めた戯鬼は言葉を続けて狂鬼に告げたのである。
「……だかラ、それは邪魔だナ」
そう告げた戯鬼が狂鬼に触れた瞬間、狂鬼は目を見開いて言葉を失った。それは何故か、答えは至って明白である。
「纏いがっ……掻き消された、だとっ!?」
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