第192話

 仮面で顔を隠した存在と対峙する狂鬼は、自分でも信じられない程に苦戦を強いられていた。何故なら、人間や妖怪、そして黒騎士達が戦う際に必要最低限の要素。力の源である妖力が存在している。

 しかし、狂鬼が対峙している存在からはその妖力が感じられない。感じないだけならまだしも、攻撃する瞬間や移動している瞬間、気配を辿る際に必要な要素である妖力が感じられないのだ。

 気配を辿ろうとすれば追う事が出来ず、攻撃を仕掛けられれば気付くのが遅れてしまう。それを繰り返している所為で、狂鬼は早くも満身創痍となってしまっている。


 「はぁ、はぁ、はぁ……クソっ(攻めても通用しねぇし、避けようとしても避け切れねぇ。力の押し合いでも負けてる時点で、オレの勝てるビジョンが全然浮かばねぇ)」

 「……」

 「(それにさっきの……どういう意味だ?オレが知りたいだぁ?訳が分からねぇぞ、ちくしょうがっ!)」


 考えても苛立つだけだと理解した狂鬼は、手斧を出現させて牽制する。回避行動を取らず、ただ片手間に対処されてしまっている。その様子を眺めつつ、狂鬼は相手の様子を伺い続ける事にした。

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