第193話
衝突し合う剣戟は、周囲の木々を薙ぎ倒す程の衝撃があるのだろう。狂鬼の背後にある木々が、一撃で薙ぎ倒されてしまっている。一つの道が出来上がってしまう程の衝撃は、狂鬼の手元にも圧し掛かっている。
「(くっ、重てぇな。ただの攻撃に手が震えるなんて、久し振り過ぎるだろ)」
勝ち目。自分が勝てるようなビジョンが浮かばない。そんな状況だというのにもかかわらず、狂鬼は目の前の相手を見据えたまま口角を上げた。ニヤリと笑みを浮かべる狂鬼は、久しく感じていなかった昂りを感じていたのだ。
「……」
「くく、くはははは……強ぇ……こんなに強ぇ奴は久し振りだ!!」
狂鬼は歓喜していた。昂りは高揚感。強敵との戦闘。神経を研ぎ澄ませ、命を賭けなければ勝つ事は不可能と思える存在との戦闘。過去でその昂りを感じさせたのは、圧倒的な相手だった焔鬼のみ。
心の底から勝ちたいと、負けても悔いはないと感じる相手は過去にただ一人だった。そんな事を思い出していた狂鬼は、両手に持った手斧を構えて声を荒げて告げたのである。
「――黒騎士改め、鬼組が一人!オレの名は狂鬼っ!!冥土の土産にぃ……覚えておきなぁ!!!」
そう告げた狂鬼は、地面を蹴って仮面の相手との距離を詰めた。
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