第140話
「お姉様っ!!」
左近の声でハッとした右近だったが、体が瞬時に動かなかったのだろう。左近に体を引かれた事で、咄嗟の事を回避する事が出来た。引き寄せられた事で、何が起きたのかは目の前で証明されている。
妖術に掛かっていたはずの魅夜が、片手で顔を半分覆いながら顔を歪めている。一目で苦しそうだっていう事は理解出来るが、右近は魅夜の様子を見つつ疑問が先に浮かんだのだろう。
右近は睨み付けながら、微かに揺れる魅夜に問い掛けた。
「貴女、どうして動けるの?」
「はぁ、はぁ、はぁ……っ、楽には殺さないっ」
そんな右近の問いに対し、魅夜は容赦なく爪を立てる。思い切り振るわれる腕を見て、右近は後方へ下がる前に左近に視線を向けた。
「――っ!?左近っ」
「はい、お姉様!」
魅夜の動きを封じる為に妖術を発動しようとした左近だったが、目の前から姿を消した魅夜の姿を捉える事が出来なかった。見失ってしまった魅夜の姿を探していた左近だったが、右近へと視線を戻した途端に目を疑った。
「まずは……一人……だ」
そこには、右近の胸を貫いた魅夜の姿があった。
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