第63話
「はぁ、はぁ、はぁ……っ」
「そらそらぁ!!何処まで耐えられるか、試してやるよぉ!!なぁ、九尾ぃ!」
杏嘉は後方へ下がりながら、豹禍の攻撃を受け流し続ける。だがしかし、豹禍の戦い方は杏嘉の実力を
そんな豹禍の笑みを憎たらしいと感じる杏嘉は、奥歯を噛み締めながら反撃を繰り出した。だがすぐに距離を取られた事に苛立ちを覚え、杏嘉はキッと殺意に満ちた眼差しを豹禍へ向ける。
「ハァ、やれやれ。せっかくお膳立てして二人きりにしてもらったんだ。俺をガッカリさせんじゃねぇよ。俺をもっと楽しませろよ、九尾」
「テメェ、アタイをイライラさせるのが得意みてぇだな。そんなに死にてぇなら、望み通り殺してやるよこの野郎っっ!!!」
そう言い放った杏嘉は、豹禍と開いていた距離を一瞬で詰めた。豹禍は依然として表情を変える事なく、いとも簡単に杏嘉の拳や蹴りを受け流して反撃する。
余裕を感じる豹禍に対し、杏嘉は既に息が上がっている状態だ。怒りに任せている攻撃方法では、悪戯に体力を消耗させてしまうだけだろう。しかし杏嘉は、復讐に駆られてしまい冷静な判断が出来ないでいる。
「――ぐっ!?」
そんな杏嘉に目を細め、溜息混じりに豹禍は杏嘉の事を蹴り飛ばした。重い一撃を喰らった杏嘉は空中で体勢を立て直し、衝撃を外へ逃がしながら着地した。
未だに睨み付ける杏嘉に対し、豹禍は肩を竦めて口を開いた。
「チッ、テメェやる気あんのか?この程度で俺を倒すだ?良くこの程度で俺を殺せるなんて思ってたな。お気楽な生活を送り過ぎて、平和ボケでもしたかよ」
「んだとっ、調子に乗るなよ!クズ野郎がっ!」
目を見開いて距離を詰めた杏嘉は、豹禍へ手刀を繰り出そうとした。瞬く間に距離を詰められた豹禍は、驚いた表情を浮かべて杏嘉の事を捉える。
咄嗟の事で回避行動が遅れた事を察知した杏嘉は、渾身の一撃を込めて豹禍の胸を貫こうとする。
だがしかし、杏嘉は目を疑った。
「ほれ、所詮はこの程度だぜ?テメェの力はよ」
「……っ」
貫くはずだった杏嘉の手刀は、確かに豹禍の胸を貫く直撃コースだった。防ぐ様子も見せなかった豹禍だったが、それは防ぐ必要が無かったのだと悟らせる為の口実だった。
それを今、杏嘉は目の当たりにしたのである。
「――興醒めだ。死ねよ、お前」
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