第172話
刹那が戦闘を開始した頃、その妖力が溢れ出て流れて来たのだろう。遠くに居るはずの彼女は、森の奥で空を見上げて目を細める。暗雲が流れるのを見つめる彼女は、自身の力を取り戻す為に記憶の場所へと来ているのだ。
――由良茜。
鬼組総大将……今は元総大将となってしまった焔鬼の許婚であり、人間と鬼の血を引く半妖。そんな彼女が何故ここに居るかは、自らの力を解放する為にある。
焔鬼の手によって記憶を封じられていた事で、人格が二つに分かれた彼女は力も二分されてしまっている。そして記憶が封じられている事もあり、彼女自身の力も全盛期の物とは程遠い。
半妖よりも劣り、人間よりも微かに高い妖力を持っている。だが鬼組に所属している同じ半妖の魅夜に比べれば、力量差は歴然となると言っても過言ではない。それを理解していた彼女は、自らの記憶を頼りに思い出の場所を振り返っていたのである。
「……ここが、私がほーくんと一緒に逃げた最後の場所。そして――ほーくんが、私の記憶を消した場所……という事なのかな」
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