第133話

 ――右近が武力介入する数十分前。


 衝突を繰り返していた魅夜だったが、左近の戦闘能力を侮っていたのだろう。体力の消耗が激しいのか、肩で息をしていた。


 「はぁ、はぁ、はぁ……」


 だがしかし、左近も魅夜の力を見誤っていた。半妖とはいえ、大した力を持っていないと思っていたのだろう。戦闘が続く度、魅夜の鋭さは凄まじく上昇している。

 衝突し続けながら交える視線は、殺気に包まれている事を肌で感じる。それを感じる度、左近は魅夜を睨み付けて目を細める。


 「いい加減くたばれ、猫!」

 「ボクも鬼組幹部として、負ける訳にはいかない」

 「はっ……人間を守る等、物好きな事だ。所詮は下等生物という訳だ」

 

 左近の言葉を聞いた魅夜は、ピクリと眉を寄せて目を細めた。


 「人間を守る?冗談……――人間なんて心底どうでも良い!」

 「っ(こいつ、いつの間に間合いに)」

 

 瞬く間に距離を詰めた魅夜は、素早く左近の顔面を狙って腕を振るった。眼前を掠めた攻撃を回避した左近だったが、微かに片頬に切り傷が浮かんだ事に苛立ちを見せた。


 「ボクは人間なんて大嫌いだ。でもこの町はハヤテが、刹那が、綾が、杏嘉が、村正が、鬼組の皆が暮らす町だ!その場所に土足で踏み込んだお前達に、負ける訳にはいかないだけだ!!」

 「有象無象が集まった所で、所詮は寄せ集め。あの方に勝てると思っているのなら、それこそ分不相応な事だな!!」


 力の限りに振るわれる攻撃を回避しつつ、魅夜は自身の攻撃範囲を理解しているのだろう。左近の攻撃がギリギリ当たらない距離を保ちながら、果敢に攻撃を仕掛け続けていた。

 やがて数十分が経過する頃、満身創痍となった左近が出来上がったのである。


 「――お待たせしました、左近」

 「お、お姉様……申し訳御座いません」

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