第134話

 魅夜の前に姿を現した右近。そんな右近の姿を見た瞬間、魅夜は目を見開いて右近を見据える。一変、姿形は何も変わっていない。だがしかし、右近が纏っている空気が一変していた。

 妖力は色濃ければ濃い程、オーラとして浮かび上がるようになる。そのオーラが濃ければ濃い程、妖力が高く強者である事を示している。実力差があればある程、戦うべきかを見定める判断材料となるだろう。

 そして今、魅夜は驚きを隠せない表情を浮かべていた。何故なら右近の妖力は、先程よりも遥かに増している事を感じたからだった。


 「お前……一体何をした?」

 

 その問いに対し、右近はニヤリと笑みを浮かべる。だがすぐに視線を動かし、満身創痍となっている左近へと向けられた。傷付いた左近に歩み寄り、しゃがんで左近の頬に手を添えながら言った。


 「大丈夫よ、安心なさい。後は私が始末しておくわ」

 「はい、お姉様。……」

 「さて、待たせたわね。猫」


 振り返った右近は、真っ直ぐに魅夜を見据える。その視線には殺気が包まれており、凄まじいオーラを肌で感じた魅夜は咄嗟に身構える。警戒心を露にする魅夜に対し、右近は笑みを浮かべて一歩だけ前に出て言った。


 「そんなに警戒しなくても仕方のない事よ。何故なら、既にもう貴女は私の術中なのだから……」

 「っ!?(体が、動かないっ?)」

 「――妖術、月詠つくよみ

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