第135話
これは、夢だろうか?
それとも、現実だろうか?
心地良いと思える程の温もりの中、魅夜の意識は朦朧としていた。目の前に広がる景色の中で、魅夜は鬼組の仲間達と幸せそうに笑みを浮かべている。だがしかし、これは全て紛い物である事を悟れていなかった。
「……」
虚ろな目となっている魅夜を見下ろし、右近はニヤリと笑みを浮かべて近寄る。一歩、また一歩と確実に距離と詰める。ゆっくりと、無遠慮に魅夜の間合いへと侵入する。
だがしかし、虚ろな目をしている魅夜は動く気配はない。否、動けずに居るのだ。まどろみにも似た
「相変わらず、お姉様の術は見事なものですね」
「そうでもないわ。この術は妖力をかなり消耗するもの。だから、必要以上の妖力が必要になってしまうからリスクでしかないわ」
「それでも、効き目は抜群のようですね」
「ええ、そうね。今頃、この猫は己が望んでいる幸せに身を寄せているはずよ。そう、極上で甘美な夢の世界をね」
右近が魅夜に見せている紛い物の世界。それを現実ではないと悟るには、強靭な精神力と忍耐力が必要になる。だが、蔑まれていた過去を持つ魅夜には鬼組という場所は温かさ過ぎたのだろう。
目の前に広がっている景色に笑みを浮かべ、徐々に偽物の幸せという沼に足を踏み入れる。沈めば沈む程、右近の術中に嵌ってしまうというのに。
「お姉様、トドメはいつ刺しましょうか?」
「もう少しだけ慈悲を与えましょう。幸せは誰にでも与える物でしょう?敵とはいえ、一度は同じ将を持った者。憎たらしいと思わざるを得ないけれど、少しばかりの慈悲と絶望を与えた方が気持ちが良いと思わない?」
「フフ、お姉様は素晴らしい事を考えますね」
「それでも、貴女を傷付けた報いは受けてもらいましょう。そう、格別な物をね」
そう告げた右近は動かない魅夜の髪を引っ張り、無防備な魅夜の体を持ち上げる。そしてニヤリと笑みを浮かべ、嬉々とした様子で目を細めながら言ったのである。
「飴の後は、鞭をあげないとね。……さぁ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます