第十夜「覚醒」
第136話
「おい、魅夜~?」
「ん……んん……」
「いつまで寝てやがんだ?さっさと起きろよ」
「んぅ……んあ?」
むくりと起き上がった魅夜は、心底眠そうな様子で目を擦る。その様子に呆れつつ、溜息混じりに襖を開けて明かりを入れる杏嘉。
視界を覆う程の眩しさに対し、魅夜は嫌悪しつつ顔を庇いながら杏嘉の姿を見て目を細める。薄っすらと感じる違和感がありつつも、それを払拭出来ずに魅夜は杏嘉に言った。
「杏嘉、眩しい。襖閉めて」
「まだ寝るつもりか?せっかくアタイが起こしに来たんだ!さっさと、起きやがれ」
無理矢理に布団を剥がされた魅夜だったが、杏嘉の視界に魅夜の姿はない。布団を引き剥がしたと同時に起きたのかと思った杏嘉だったが、それは大きな勘違いであった。
何故なら魅夜は、引き剥がした布団にしがみ付いていたからだ。
「っおい、まじでさっさと起きねぇと朝飯に遅れちまうだろうが!!頼まれたアタイの身にもなれってんだ」
「ボクは朝食べなくても平気。寧ろ、これだけ暖かいと寝てた方が燃費が良い」
「お前が良くてもアタイが嫌なんだっつの!良いからさっさと、布団を離せぇぇ」
「んん~!!」
口論しつつ、布団にしがみ付く魅夜とそれを引き剥がそうとする杏嘉の図が出来上がった。そんな事をしている間に、戻って来ない杏嘉を気にしたのだろう。廊下から顔を覗かせる綾が姿を現した。
「お主ら、まだやっとるのか。はよう来い、じゃないとお主らの分もワシが食べてしまうぞ?良いのか?お主らの好物も頂くとしようかのう」
「――ダメ!」「――駄目だ!」
綾の言葉に脅された魅夜と杏嘉は、急いで綾の後を追おうと寝室を後にする。そんな先に行く綾と文句を言いながら隣に並ぶ杏嘉の姿を見つめた魅夜は、ノイズ混じりの映像が脳裏を過ぎったのである。
だがすぐにノイズが消えた魅夜は、それが何なのか分からずに廊下を進むのであった。
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