第169話

 刹那は空中に浮かぶ魔鬼を見据えたまま、方陣を展開させてその場で様子を伺う。接近戦を仕掛けてくる様子がない以上、このまま遠距離戦になるのだろう。そう予想する刹那だったが、それは甘い考えだという事を理解する。

 瞬きをした途端、刹那の視界から魔鬼の姿が消えたのである。ハッとした刹那は周囲を見渡したが、魔鬼の気配を読み取る事が出来ない。妖力は感じる、だがその姿は見失ってしまっている。


 「(何処へ?いや、それよりも私自身の防御を)」

 「――判断、遅いんじゃないかしら?」

 「っ!?(しまっ)」


 周囲を見渡しても姿を見つけられなかった刹那は、急接近した魔鬼の気配に気付くのが遅れた。背後に振り返った刹那に対し、魔鬼は顔面を鷲掴みにして地面へと叩き付けた。


 「ぐっ!」

 「空中戦は様子見。やはり戦いは、地上戦に限るでしょう?」


 ニヤリと笑みを浮かべたまま、魔鬼は地面を抉るように刹那を押し付けた。

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