第15話

 「屋敷に戻って来たかと思えば、急に幹部会議って……急過ぎじゃないっスか?姐さん」

 「仕方無いでしょう?私だって、もう少しゆっくり行動したかったんですけどね。そうも言ってられないから全員を召集しょうしゅうしたんですよ」


 ハヤテと言葉を言葉を交わす刹那は、溜息混じりにそう言いながら周囲に目配せした。合流した魅夜の様子を伺ったが、部屋の隅で体育座りしている姿が目に入る。

 その様子を眺めていると襖が開いて、召集した他の幹部も合流した。


 「お、もう既に三人集まってるじゃねぇか。遅刻って訳じゃなさそうだな」

 「毎回遅刻する方が、どうかしとると思った方がええがのう」

 「こんな時まで小言かよ、綾。ったく、これだからババアは……」

 「あまり差は無いじゃろうが……すまんのう、待たせたかの?」


 いつものような口論をしつつも、杏嘉と綾は隣に座っている。仲が悪いように見えるが、共に行動している事から仲が良いのは明らかである。そんな見慣れた様子を見つめつつ、綾の問い掛けに応じたのは刹那だった。


 「いいえ、大丈夫ですよ。後は、黒騎士の皆さんが到着すれば全員ですね」

 「黒騎士の連中も呼んでるのか?……ちゃんと来るんだろうなぁ?」

 「貴女よりも時間にルーズじゃありませんし、大丈夫でしょう」

 「うぐ……刹那までそんな事言うのかよ。何か最近、アタイへの風当たりが強くねぇか?」


 足を崩して男勝りな座り方をしつつ、杏嘉は渋い表情を浮かべながらそう言った。納得出来ないような表情を浮かべているが、そんな杏嘉に呆れながら溜息混じりに答えのは部屋の隅に座っていた魅夜だった。


 「いつもと変わらない。というより、日頃の行いを振り返るべきだよ。杏嘉は」

 「魅夜まで!?同じケモノ系妖怪としての同情があると思ってたのに!」

 「ケモノ系妖怪って何?……あと、○○系○○って言い方で一色にされるのは好きじゃない」

 「妹分の癖に生意気になったモンだなぁ」

 「ボクは杏嘉の妹分になった覚えは無い」

 「あんだとぉ!?」


 ――ぱちぱち。


 杏嘉が声を荒げた瞬間、それを遮るように手が叩かれた。口論をしていた二人は勿論、黙って待っていた者達も同じ場所へと視線を向ける。そこには目を細めるハヤテの姿があった。


 「慣れた喧嘩は後にして、会議を始めるっスよ」

 「は?全員集まって無ぇのに始めんのか?」

 「そんな事しないっスよ。というか、流石に気付いてると思ったんスけどね」


 ハヤテの言葉を聞いた杏嘉は、首を傾げてからハッとした。煙管キセルを咥え始める綾は、目を細めつつも呆れた様子で呟いた。


 「お前さんだけじゃぞ?すぐに気配に気が付かなかったんは」


 目を細める綾の視線の先には、ハヤテの後ろに並ぶ黒騎士達が立っていた。ハヤテの近くで座り始める黒騎士を見届けたハヤテは、やがてニヤリと口角を上げて口を開いた。


 「……さて、それじゃ緊急会議を始めるっスよ」

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