第71話
姿を変貌させた豹禍の姿に目を奪われた杏嘉は、豹禍の姿に驚きつつも警戒を解くつもりは無い。人狼と化した豹禍の妖力は、先程までの妖力よりも桁違いに上昇している。
それを肌で感じている杏嘉を含め、周囲に居た餓鬼達や鬼組の者達、そして町の住人達も感じているのだろう。一歩、また一歩と近寄る豹禍。そんな豹禍に対し、杏嘉は一歩ずつ下がってしまう。
「どうしたぁ九尾ぃ。俺が怖ぇか?あぁ?」
本能が体を反射的に動かしたのだろう。杏嘉の些細な行動を見た豹禍は、ニヤリと笑みを浮かべながらそう問い掛ける。だがしかし、その問い掛けを聞いた杏嘉は足を思い切り地面で踏み抉った。
「アタイが、テメェを?冗談だろ。……アタイが怖いと思ったのは、過去に一人だけだ。テメェ程度じゃ興奮すらしねぇよ」
「発情期も経験した事が無ぇ女狐が。調子に乗れるのも今のうちだぜ?」
「発情期だぁ?自惚れるなよ。アタイが身を任せるのは、アタイが認めた
杏嘉はそう声を荒げ、踏み抉っていた地面を蹴った。豹禍の眼前に拳を突き出したが、ニヤリと豹禍は牙を剥き出しにしてその拳を受け止める。
「その程度か?」と問い掛けられた杏嘉だったが、すぐに「んな訳ねぇだろ」と告げてから体を捻った。蹴り上げられた脚を回避した豹禍に対し、すぐに着地した杏嘉は距離を詰める。
反撃の隙を与えないようにして攻め込む杏嘉だが、その表情は苛立ちが浮かび上がっている。拳を突き出し続ける中、豹禍は受け流す事もせずに回避に徹する。
「お前も力を解放しろよ。そうすれば、ちゃんと戦ってやるよ」
「うるせぇ。テメェの言う事なんざ、聞く訳ねぇだろうが!!!」
回避に徹する豹禍は、杏嘉の言葉に眉根を寄せた。やがて舌打ちをした豹禍は、回避した瞬間に拳を振り上げた。その拳は杏嘉の腹部に入り、重い一撃が視界を揺らす。
「うぐっ!?」
「俺をあまりガッカリさせんなよ、九尾。今のお前じゃ、俺には勝てねぇよ」
膝を折って苦しむ杏嘉を見下し、豹禍をそう告げたのである。
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