第129話
「くっ……!」
左近の腹部に蹴りを放った魅夜。そんな魅夜の攻撃を受けた左近は、蹴り飛ばされながらも体勢を戻そうと宙返りをする。着地したが速度が衝撃を逃がす事が出来ず、左近は地面を数メートル引き摺った。
自分も腹部を蹴られた事への仕返しのつもりで放ち、受けた痛みよりも高い威力で放ったつもりだった。だがしかし、魅夜は蹴りを受けた左近の反応を見て目を細める。
「……あのギリギリで防ぐなんて、大した反射神経だなお前」
魅夜の攻撃を受けた左近は、両腕で魅夜の蹴りを防御したのだろう。両腕に微かな打撃痕があるのだが、大したダメージを受けていない様子だった。その様子に不満気な表情を浮かべる魅夜は、微かに苛立ちを見せながら言葉を続けて言った。
「もう少し本気で蹴れば良かった」
「お前の力ではその程度、そうお姉様が言っていたはずだ。お姉様より劣る私だが、お前程度であれば大した力を使う事も無い。どうだった?自分が有利であると感じる時間は」
左近の言葉を聞いた魅夜は、目を細めて左近を睨み付けた。挑発に乗るような事をするべきではないと考えていても、煽られればフラストレーションという物は溜まるものだ。
内側から込み上げる感情を抑えつつも、魅夜は左近の取っている態度が気に食わなかったのだろう。色濃く、そして高く上がっている妖力をさらに激しく溢れさせる。
「(これ程に凄まじい妖力は、あのお方と最初に通された時のような感覚。確かに凄まじいが、所詮は猫だ。お前では私どころか、お姉様の足元にも及ばない)」
その溢れている妖力を感じた左近は、魅夜へ哀れむような視線を送った。
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