第149話

 「――っ!お前、その姿は何だ?」

 

 左近を覆い尽くした妖力から距離を取った魅夜は、溢れて漏れた妖力の主である左近を睨み付ける。その姿は先程と異なり、片角しかなかった左近の角は額に二本の角が生えていた。

 その気配は強者特有の妖力がオーラとなっており、付近の重力に気圧されながらも左近に問い掛ける。本物の鬼の姿となった左近の妖力は、凄まじい圧力を感じざるを得なかった。


 「……」

 「無反応……意識はあるのか?ないのか?」

 「感じるか?猫。お姉様の妖力を。これが……お姉様の妖力を取り込んだ私は、お前よりも強いぞ」

 

 キッと睨み返した左近は、魅夜の殺気を向ける。その殺気に圧力が生じており、魅夜はそれに気圧されながらも左近の言葉に応える事にした。


 「死んだ奴の力なんてたかが知れてる。そんな奴には負ける訳がない」

 「試してみる?」

 

 その問い掛けに対し、左近と魅夜の間が静寂に包まれる。次の瞬間、魅夜と左近の姿が消した。真に一人の鬼として覚醒した左近の妖力は、幽楽町全体に拡がっていたのである。

 拡大した妖力に対し、桜鬼と杏嘉の戦いを見つめていた焔鬼は空を見上げた。


 「……サクラ、オレは少し出てくるぞ」

 「はい、兄様。存分に」

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