第337話

 妖力のみで周囲に風圧を広げる覇鬼。その威圧感は、今までの威圧よりも圧力があったのだろう。衝撃を受け流せず、威圧された狂鬼と酔鬼は距離を取って焔鬼の隣に着地した。

 

 「ったく、とんだ厄日だなぁ今日は。俺がこんな戦いに参加させられるとはよぉ」

 「まぁそう言うな、酔鬼よ。これが私達が選んだ道なのだ、最後まで責任を果たすべきだ」

 「へいへい。鬼組の連中はどうなったんだぁ?狂鬼ぃ」

 

 蒼鬼と言葉を交わした酔鬼は、隣で「邪魔!」と言いながら手斧を餓鬼へ投げる狂鬼へ問い掛ける。その問いに対して、狂鬼は振り返りながら答えた。


 「あいつ等は無事だ。けど、あれをまともに食らった奴も居るからな。戦力として数えない方が戦いやすいと思うぞ」

 「お前がそう言うならそうなんだろうなぁ。まぁ……他の事を考える余裕は俺達には無いけどなぁ」

 「それは同感。あの妖気を浴びた所為で、全身から悲鳴が上がってる。これ以上、被害を出す訳にもいかねぇだろ」

 「何だ、守る気満々だったのか?案外、この町を気に入ってたのかぁ?」

 「……否定はしねぇよ。つか、飯が美味いからな。剛鬼の奴だって、酒が美味いって言ってたぐらいだぜ?」

 「そうかい。んじゃ、倒さなくちゃならねぇなぁ」


 狂鬼の言葉を聞いた酔鬼は、小さく笑みを浮かべながらそう告げたのである。

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