第201話
一気に間合いを詰めた彼は、太刀に炎を纏わせて振るった。その攻撃手段、構え、体一つ一つの体重移動……やはり、それ等が全て重なって見えてしまうのだ。
総大将であり、黒騎士でもあった彼の面影が。
「くっ!」
奥歯を噛み締める狂鬼は、紙一重でその攻撃を回避したように見えた。だがしかし、その回避行動は一歩遅かったようだ。
ポタ、ポタ……――。
「余所見をしても、この程度の攻撃なら避けられるか。大した反応だ」
「ハハハ……馬鹿言えよ。当たってるっつーの」
「その首を落とすつもりで振るったんだ。そうなっていないという事は、こちらにとっては当たっていない」
「そう簡単に落とされて堪るかよ。負けられない理由が、出来ちまったからな」
その理由が目の前にあるという状況。彼と重なってしまう面影の正体、それを突き止めなくてはならない。そう感じていた狂鬼は、勝てなくても良い。ただ、負けないように時間稼ぎをする事に専念しようとしていた。
少しでも多く、目の前の存在から情報を引き出す為に。
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