第202話

 首筋に微かに浮いた血を拭い、狂鬼は深呼吸をして武器を手に取った。投擲する為に出現させた手斧だけではなく、複数の亀裂が出現して数多の武器が亀裂から顔を見せる。

 亜空間のような物を扱い、その中が数多の武器を収納出来ている蔵でもあるのだろう。亀裂から顔を出している武器を手に取らず、遠隔操作で手を動かせば武器を投擲する事も可能なのだろう。


 「っ!!!」


 複数の武器を一気に投擲した狂鬼に対し、彼は再び同じ行動で投擲された武器を対処し始める。最初に投擲された武器を回避しつつ、空中で別の投擲武器を手に取り、次の武器の軌道を逸らす。

 人間技からは程遠く、だが黒騎士でも出来る者も少ない荒業だ。相当な実力の持ち主でもあるが、自分の腕に相当な自信が無ければ出来ない芸当だろう。その様子を見つつ、狂鬼は投擲した武器を囮にして距離を詰めていた。

 背後へと回り込み、ガラ空きとなった背中を捉えたのである。


 「(もらったっ!)」

 

 ――ガキンッ!!


 「っ!?」

 

 だがしかし、狂鬼は目を見開いた。こちらを見ず、彼は攻撃を防いで見せた。だがそれだけなら良かった。防いだ彼の武器、それを目にした狂鬼は動揺せざるを得なかったのである。

 何故ならその武器は、その太刀は……正真正銘、使だった。

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