第二十二夜「妖怪と化した人間」

第283話

 ――これは、過去の記憶である。


 もう何年も、何十年も、何百年も前の記憶だ。まだ拙者が人間であり、妖怪として生まれ変わる前の記憶だ。当時の拙者は流るるまま、赴くままに町を移り住み、自分の歩んだ道を地図にしようとしていた旅人だった。

 一つの町に留まるのは一ヶ月かそこらで、それ以上に留まった事は数えるぐらいしかない。友人を出来た事も、行く先々で付き合いがあった訳ではない。しかし、そんな拙者にも、近寄る者達が居たのだ。


 『おうおうおう、ここから先に行きたければ金目の物を置いていきな』

 「物盗りでござるか……みっともない事をしているでござるな」

 『なんだとごらぁ!?』

 『ふざけてんのかぁ?あぁ?』


 拙者の行く道を阻む盗人に対し、拙者はその者達を見据えて腰の刀に手を添える。そんな拙者の動きに合わせた盗人は、左右から挟み込むように距離を徐々に詰める。

 

 「刀を抜くのは止めた方が良いでござるなぁ」

 『調子に乗るんじゃねぇぞ!!』

 『言ってくれるじゃねぇの!!』

 

 そう声を荒げて接近した相手に対し、拙者はその間を擦り抜けると同時に刀を納めた。


 「忠告したでござるのに……」

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