第216話

 桜鬼が杏嘉にトドメを刺そうとしている頃、木々の中を魅夜は移動していた。前の気配には、焔鬼の気配が未だに感じる事が出来る。移動速度がほぼ同じなのか、距離が一向に縮まる気配がない。

 それを苛立たしく感じているのだろう。魅夜は奥歯を噛み締めながら、気配の主が居る前方を見据える。


 「(全力で追ってるのに、追い着けないっ。このままじゃ見失う)」


 追って来ていると理解しているのか、焔鬼は振り返らずに背後の気配を探る。


 「(しつこい奴だ。このまま撒く事は出来るが、それでは味気ないな)」


 そう思考を働かせた焔鬼は、ニヤリと口角を上げて下へ着地した。気配が止まった事を悟った魅夜は、訝しげな視線を向けつつも同じく着地して焔鬼を睨み付ける。


 「どうして止まったの?」

 「少しだけ遊んでやろうと思っただけだ。そういうお前も、オレに聞きたい事がある顔をしているぞ?」

 「……」


 その問いに対して、魅夜は目を細めてさらに焔鬼を睨み付ける。やがて口を開いたが、その表情から微かな殺気が包まれていた事を察した。


 「どうして、裏切ったの?」

 「何?」

 「どうしてボク達を裏切ったの?答えて!焔っ!!」

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