第239話

 吹き飛ばされた。手を使わず、妖力のみで作られた風圧だ。様子見しつつ足止めしようと思っていたのだが、俺は運が悪かったのだろう。

 いや、あの時……黒騎士の一人に見つかった時点で、運が悪かったと認めるべきだっただろう。格好付けず、素直に魅夜と逃げれば良かったと思い返す。

 しかし、これで良かった。この相手の実力が、強者である事が理解出来たのだから良しとしよう。問題は……どうやってこの状況を切り抜けるかだ。


 「……」


 強さは理解出来た。後は立ち上がり、鬼組総大将代理として戦うべきだ。だがしかし、思った以上に体の調子が悪い。奴の……刹鬼の攻撃をまともに受け続けた結果だろうが、このまま項垂れている訳にはいかない。


 「くっ……ははは」

 「あ?ついに可笑しくなったのか?テメェ(まだ動けるのか?手加減したつもりはねぇが、思っていたよりもタフってのか?)」

 

 そう、項垂れている訳にはいかない。こんな所で、俺だけ倒れる訳にはいかないのだ。この町の為にも、あの人の意志を継ぐ者としても、そして……俺の為にも。


 「へへへ……さて、そろそろ行くっスよー、黒騎士」

 「何度殺ろうと同じだ。テメェじゃオレ様に勝てねぇ、役不足だ」

 「生憎、一方的に甚振られる趣味は無いんスよ。これでも俺、あの人の右腕を名乗ってるんでね」


 同胞には申し訳ないが、周囲に味方が居ない事を祈るとしよう。その時はその時、後の事は姐さんにでも押し付けるかな。説教は勘弁だが、仕方ない事だ。

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