第238話

 茜と桜鬼が対峙する数十分前、刹鬼は敵として認識したハヤテに対して苛立ちを覚えていたのであった――。 

 

 黒騎士の一人であるオレは、鬼組総大将代理であるハヤテと対峙していた。肉弾戦を得意とするオレだったが、刀を持つハヤテを相手にして苦戦するかに思えた。

 だがしかし、蓋を開ければ大した事はない。拍子抜けでしかなく、苦戦のくの字もなかった。一般人や鬼組の雑魚妖怪共から見た過大評価でしかないもので、手応えもあったもんじゃない。


 「第二ラウンドと意気込んでたが、その程度でよくもまぁオレ様を足止めしようとしたもんだなぁ。テメェみてぇな三下の所為で、焔鬼様に遅れを取ったじゃねぇか」


 首の骨を鳴らしながら、苛立ち混じりに愚痴を吐き捨てる。傷だらけとなったハヤテを放置したまま、刹鬼は強者を求めて足を運ぼうとした瞬間だった。


 「んあ?弱ぇ奴に興味ねぇ。さっさとその手を離せ、殺すぞ」

 「っ……まだ、俺は生きてるっスよ……俺が弱いなら、トドメを刺してねぇあんたは……それ程でも無ぇって事っスよね……へへ」


 手加減したつもりはないが、それなりに半殺しにしたつもりだ。それでも、オレを離さないと力を出してやがる。まだやる気なのは結構だが、弱い奴に付き合わされるオレの身になって欲しいものだ。


 「――蹴閃けっせん

 「ぐあっ……っ!」


 オレの妖術による攻撃を受け、ようやく手を離したハヤテ。手応えはあった。身動きを取る事は困難だろう。


 「そのまま大人しくしてろ」

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