第251話

 「はぁ、はぁ……ぐっ」

 「っ……っ、射殺せ……風槍ふうそう!」

 「っ!」


 桜鬼が展開している五つの球体の内、緑色の球体から術が放たれた。集束した風圧が、鋭さを持って勢い良く茜に迫る。刀で受け流そうとしようとするが、衝撃が重く火花を散らして重心が揺らされる。

 

 「――雷鳴よ……天雷っ!」


 それが大きな隙と見做した桜鬼は、空かさずに次の術を放った。次は黄色の球体から、素早いいかずちが襲い掛かる。風槍越しに見えた次の術に対し、茜はギリギリのタイミングで押し退けて回避行動に移った。

 

 「っ!?」

 「お前は……あんたはこれで終わりよ。――水竜すいりゅうっ」

 「しまっ――」


 回避行動で移動した先には、既に青色の方陣が展開されていた。着地と同時に発動したそれは、茜を覆い尽くす水の渦を作り出した。閉じ込められた事により、茜は呼吸が出来なくなった。


 「――がはっ」

 「そのまま死んで。……これ以上、私の邪魔をしないで」


 止めていた息が限界に達し、徐々に意識が遠退いていく。茜は桜鬼へ手を伸ばすが、その時……茜は薄れる意識の中で見たのである。


 「っ……もう、眠りなさいよ」


 後悔するような、悲しげな表情を浮かべる桜鬼の姿を……。

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