第47話
――約一年前。
「今日から新しく黒騎士となる者だ。名は龍鬼という」
数人の黒騎士を前にしながら、その言葉が室内に響いた。魔境の王である焔鬼様の言葉を聞いた黒騎士達の視線は、様々な反応でボクへと向けられていた。
ある黒騎士は期待するような、ある者は使えるのかと吟味するような、ある者はどうでも良いという視線をボクへ向けていた。
隣に居る焔様様の事を見つめ、ボクという存在を視界に入れない者も居た。反応としては様々だが、それぞれが選ばれた精鋭である事は明確な事実だろう。ボクよりも強い者も居れば、ボクよりも弱い者も居る。
弱肉強食……それがこの魔境にある唯一不変のルール。それに勝ち残った猛者達が、黒騎士という椅子に座る事が出来る。そんな事を考えていると、焔鬼様はボクの肩を軽く叩いてから言った。
「ここがお前の居るべき場所だ。それに相応しい仕事を期待しているぞ」
「っ……はい!」
焔鬼様が勿体無い言葉をボクに言って下さった。焔鬼様は魔境を統べる最強の存在であり、黒騎士はその存在に絶対的な忠誠を誓える椅子に座る者。御伽噺や遥か昔、王族と従者という立場があった時代のような関係となった。
かつて黒騎士であった者達が裏切り、負傷しつつもその者達を退けて一蹴なされた焔鬼様。それは正しく正義のある振る舞い。
「……」
それを聞いたボクは黒騎士となり、焔鬼様のような存在にはなれなくとも、それに近い存在になりたい。己の正義を貫き、全てを包み込むような存在となりたい。
だがしかし、ボクは一つだけ許せないものがある。それは裏切った黒騎士の中に居た一人。その人から戦い方を学び、ここまで来れた一つのキッカケでもある存在。感謝はしている。
「っ……」
でも、だからこそ許せなかった。正義を語っていた、礼儀を重んじていた者が、魔境を裏切ったという事を。だからボクは、己の正義に基づき……正義を執行する事にしたのである。
ボクはこの手で……――黒騎士の一人、剛鬼さんを討つと。
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