第179話

 「っ!?」


 氷漬けにした白虎が砕かれた瞬間だった。刹那の視界が光に包まれ、砲撃が目の前にまで迫っている事に気付いた。

 すぐに背後に視線を向けた刹那は、射線に幽楽町がある事に気付いたのだろう。回避行動を取ろうとしたが、その行動を取りやめて表情を歪める。回避すれば、回避した先にある町が消滅する事を察したのだろう。


 「(このまま避ければ、町が……くっ、背に腹は変えられませんね)」


 脳内でそう呟いた刹那は、目の前に迫る砲撃を見据えて深呼吸し始める。妖力を高め、砲撃を塞き止める為の力を蓄える。しかし、長く時間を掛け過ぎれば間に合わずに刹那諸共町を消滅してしまう。

 それを理解している刹那は、深呼吸を後に砲撃を塞き止める為の準備が整った。


 「この町を失う訳にはいきません。私はこれでも、鬼組の幹部なのですから!」


 そう告げた瞬間、中空へ手を掲げて氷の壁を出現させる。その壁は雪崩のように積み重なり、砲撃の前に出来上がった壁は分厚い壁へと完成したのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る