第331話
焔鬼の言葉に頷いた茜と桜鬼。視線の先には、不敵な笑みを浮かべる覇鬼の姿がある。大した距離は開いていない事もあり、距離を一瞬で詰める事は容易いだろう。
問題は、どちらが先に動いて先手を取るか。……という話になって来る。
「ほーくん、まずは私とサクラちゃんで隙を作るよ」
「……出来るのか?」
そんな焔鬼の問いに対して、桜鬼が茜の代わりに応える。
「やってみせます。私と茜なら、数秒……いえ、数分は隙を作ってみせます」
「サクラ、意気込みは買うが……妖術で拘束しようと考えてるならやめておけ」
「ど、どうしてですか?拘束すれば確実に兄様が攻撃出来る瞬間が……」
「覇鬼は背中から腕を何本も生やす事が出来る。有限かどうか知らないが、体を拘束されても腕を生やせない事は無いだろ。そうなれば、妖術を放っているお前は無防備になる。危険だ」
「っ……」
焔鬼の言葉と真剣な眼差しにドキリとしつつも、桜鬼はどう隙を作るか思案を巡らせる。覇鬼と桜鬼の実力差が明確に出てないが、それでも自分より上だと理解しているのだろう。
桜鬼は慎重に、されど大胆に妖術の構築をし始めた。
「茜……少し手伝ってくれないかしら?」
「何か思い付いたのか?サクラちゃん」
「鬼化してるアンタなら戦力として十分よ。でもアンタ一人じゃ、妖力はあっても妖術に持続性が無い」
「あ?こんな時に喧嘩したいのか?サクラちゃん」
「アンタ、鬼化してる時の性格考え直した方が良いわよ」
見下すように睨み付ける茜の視線には、微かな威圧感が包まれていた。そんな茜の視線に呆れつつ、肩を竦めながら桜鬼は咳払いをして告げる。
「コホン……それじゃ茜、久し振りに共闘しましょう」
「ハッ、しゃーねぇ。やってやろうじゃねぇか」
そう告げた茜は刀を構え、瞬く間に纏いを発動して地面を蹴った。距離を一気に詰めた茜に対し、覇鬼は嬉々とした表情を浮かべて呟いたのである。
「――素晴らしい力だ」
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