第332話
覇鬼から広がっている妖力は殺気に覆い尽くされている。その殺気に鬼組の妖怪達は、重力に圧し掛かれているかのように立ち上がれずに居た。そんな最中、鬼化した茜は覇鬼の懐へと正面から距離を詰める。
「はぁっ!」
「フッ、良い気迫だが……その程度では世を倒せぬぞ?」
「そりゃそうだろうなぁ!」
刀を振るった茜の攻撃を片手で防いだ覇鬼は、ニヤリと笑みを浮かべてそう言った。その言葉に対して、茜も口角を上げて振るった刀に力を入れる。
しかし、力の押し合いとなれば、力の弱い方が負けるのは必然。それを察した茜は、まだ妖力を練っている桜鬼の状況を確認する。だがすぐに視線を戻した茜は、短く息を整えて再び覇鬼へ攻め込んだ。
そんな様子を見ていた覇鬼は、茜の思惑を察して口角を上げて口を開く。
「なるほど。貴様が囮となって、サクラに世を攻撃する思惑という訳か。貴様等なりに知恵を回したようだが、言ったであろう?その程度では世を倒す事は出来ぬと」
「あぁ、そうだろうな。でもよ、私一人で隙を作ろうなんて思っちゃいねぇよ」
「っ!?(焔鬼か)」
茜の言葉と同時に茜の背後から姿を現した焔鬼を見据え、覇鬼は目を細めてほくそ笑んだ。炎を纏った刀を振り下ろした焔鬼に対し、覇鬼は背中から生やした腕と開いている腕を使って応戦する。
「チッ、まだ生えるのか。相変わらずの化物っぷりだな」
「貴様に言われるのは心外だな。半妖である貴様の方が、この時代では最も化物と呼ばれる存在だろう?」
「テメェに言われる方が心外だ」
「何、照れるな。世なりの褒め言葉だ」
「そうかよっ」
焔鬼と茜が同時に攻撃した事で、やっと覇鬼と互角の力の差のようだ。押し弾いた焔鬼に続き、上がった腕が下ろされる前に覇鬼の胸を貫こうとした。
「破ッ!!」
「隙が出来たと思ったか?その判断は迂闊だったな」
不敵な笑みを浮かべた覇鬼は、懐へ飛び込んだ茜の刀に対して手刀を繰り出した。その瞬間、茜の目の前で目を疑う景色が広がったのである。
「(私の刀が……砕かれたっ?)」
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