第324話
――終わりだ。
「(この町は……いや、町だけではない。この世界は、この時代はもう終わりだ)」
そんな事を考える蒼鬼の視界には、倒れた鬼組の面々と荒廃した大地が広がっていた。森も町も、全てが覇鬼のオーラによって吹き飛ばされてしまったからだ。
更地となってしまった様子に目を疑う蒼鬼は、迫り来る覇鬼のオーラを回避する為に咄嗟の判断で距離を取っていたのだ。だがしかし、離れた位置から見える世界は既に終わり勝敗はついてしまったように見えている。
「チッ、これがアンタのしたい事だったのか!魔境の王は、オレ達の憧れは……オレ達妖怪や鬼の一族の繁栄を望んだ一族じゃなかったのかよっ!!」
「狂鬼……」
倒れたハヤテ、刹那、魅夜……そして鬼組の面々が倒れた中心で佇む覇鬼に対して、狂鬼は声を荒げて覇鬼に問い掛けた。その言葉を聞いた覇鬼は、狂鬼へ視線を向けて不敵な笑みを浮かべて告げる。
「その通りだ。だから人間界である現世は、魔境となるべきだ。この時代は素晴らしいが、我々は魔の存在。その存在が生き残り続ける為には、戦いこそが唯一の存在証明だ!世はこの平和を望まぬ。戦争!戦いこそが世の愉悦!」
「っ……ふざけんなっ!」「待て狂鬼!早まるなっ!!」
目を見開いて怒りを露にした狂鬼は、地面を蹴りながら纏いを発動して覇鬼との距離を詰める。それを制した蒼鬼だったが、その言葉は届かずに狂鬼は覇鬼に大斧を力の限り振るった。
それを片手で掴み取った覇鬼は、目を細めて呆れた表情を浮かべて狂鬼を見下す。
「なっ」
「そうだ、戦え。貴様等は戦う為に生まれ、戦って死ぬ
「アンタは知らねぇ。この世界の……この町の人間は、みんなオレが黒騎士であろうと受け入れた。ぬるま湯のような奴等でも、それが良いと思える奴等の町だったんだぞ!!」
「世迷言だ。所詮、人間は愚かな生き物だ。貴様等が膨大な妖力を持つ化物である以上、ただの人間と相容れる事は無い。永遠にな!!」
「ぐっ!」
「貴様もそう思うであろう?蒼鬼よ」
狂鬼の攻撃を返し、殴り飛ばした覇鬼はその問いを蒼鬼へ向けた。問いを向けられた蒼鬼は、体を強張らせて眉を顰める。頭を抱え、現世と魔境で過ごした過去を振り返る。
戦い……確かに黒騎士である蒼鬼達は、戦いのみが存在意義であると教えられた。力こそが支配に必要不可欠な要素であると、そう教え込まれて育って来た。だがしかし、目の前に広がる景色を見て蒼鬼は奥歯を噛み締めて立ち上がる。
「――申し訳無いが、私では覇鬼様と分かり合う事は出来ぬ!」
「フッ、ならば言葉ではなく行動で示してみよ。世を止めるという事は、戦いで解決するしかないのだからな」
「くっ……(私の力だけでは)――っ!?」
勝てるかどうか不安が募る蒼鬼。死を覚悟して戦いを挑もうか迷いが生じた瞬間だった。肩を叩かれた蒼鬼は、隣に並んだ者……いや、者達の姿を見て不安が消え始めたのである。
「安心しろ、蒼鬼……これ以上、あいつの好きにはさせねぇよ」
「焔鬼……」
笑みを浮かべた焔鬼はすぐに切り替え、大きく息を吸って声を荒げたのだった。
「――テメェ等、オレが居ない間に随分と腑抜けたな!オレの仲間は、家族は、そんな柔な奴等の集まりか?腰抜け共の集まりか?……違ぇだろ!!奴に見せてやれ、オレとお前等の……オレ達の絆を!この絆だけは誰にも断ち切る事は出来ないってなぁ!!!そうだろ、テメェ等!!!」
その言葉を聞いた鬼組の面々は、それに応えるように起き上がっていく。ゆっくりと起き上がり、覇鬼を取り囲むように配置していった。そんな者達の様子を見た蒼鬼は、焔鬼に問うのである。
「む、無茶だ。相手は魔境の王だ。生半可な覚悟では、いずれ全滅するぞ」
「言ったろ、オレの
「っ!?」
「全員気ぃ入れろ!オレ達は勝つ!!この戦いを終わらせるぞっ」
『――応ッ!!』
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