第328話

 「妖術、氷刃槍ひょうじんそう


 鬼組の組員が覇鬼に攻め込み、そしていとも容易く葬られた。命を落とし、数十人居た妖怪達は既に数名となってしまっている。この場に居る妖怪達は戦闘員でも、その実力は幹部には及ばない。

 その幹部の一人である刹那が、他の妖怪達の作り出した瞬間を見逃さなかった。覇鬼の周囲を覆い尽くす程の氷の槍で包囲した時を見計らい、魅夜とハヤテもほぼ同時に覇鬼の間合いに攻め込んだ。


 「(ハヤテさん?魅夜?そのままじゃ私の妖術がっ)」

 「姐さん、そのまま!」「刹那、そのまま!」

 「っ!――どうなっても知りませんからね?」


 その言葉に従った刹那は、覇鬼に攻め込んだ魅夜とハヤテが居るのにもかかわらず氷の槍を撃った。そんな様子を眺めていた覇鬼は目を細め、攻め込んだ魅夜とハヤテに対しても肩を落として口を開く。


 「はぁ……世を挑むというから期待したが、興が削がれた」

 「「「っ!?」」」

 

 溜息を吐いた覇鬼を中心に風圧が、刹那の技と共に魅夜とハヤテを吹き飛ばした。


 「っ!(いつの間に?)」

 

 距離が開けられ、再び攻め込もうとした瞬間である。ハヤテと刹那、魅夜が下がったと同時に攻め込んだ人影があった。


 「――(焔鬼、この隙を狙っていたのか)」

 「オレの仲間が作った時間だぜ?オレが見逃す訳がないだろ」


 そう告げた焔鬼は、覇鬼に向かって刀を振り下ろした。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る