第348話
「その姿は一体、何なのだ」
覇鬼は目を見開きながら、焔鬼の姿を見据えていた。黒装束に身を包んだ焔鬼は、黒炎を纏いながら剣先を覇鬼へ向ける。
「さぁ、決着を付けようか。覇鬼」
「良いだろう。挑んでくるが良い!我が子よっ!!」
同時に地面を蹴った覇鬼と焔鬼の姿は、茜や桜鬼の視界から一気に消えた。そして僅か数秒後、空間が歪む程の衝撃が周囲を包んだ。凄まじい妖力の衝突と焔鬼の刀から発生している熱風に中てられる。
その熱風に耐え切れなかった桜鬼は、自身の前に障壁を展開し始めた。隣に並んでいた茜に障壁内へ入るように促したが、茜は焔鬼の戦いの行く末を見守っていた。
「っ!(頑張って、ほーくんっ)」
「祈ってる場合!?さっさとこっちに来る!」
「わわっ、サクラちゃん、いきなり引っ張らないでよ!?」
「いきなりじゃないわよ、呼んでたわよ!ほら、さっさとこっちに来なさい」
桜鬼に腕を引っ張られ、障壁内へと入る事になった茜。しかし、桜鬼はすぐに茜の身体や顔を見て違和感を覚えた。
「茜、あんた、どうして火傷してないの?」
「え、あ、あれ?熱かったんだけどなぁ、何でだろ?」
桜鬼の言葉に戸惑いを見せる茜だったが、熱風を受けた茜自身も火傷が無い事に驚いていた。だがしかし、すぐに茜は覇鬼と戦う焔鬼へ視線を向けたのである。衝突し合う直前、焔鬼の視線が重なった瞬間に茜は理解したのだった。
「……っ(また足手まといになるつもり?由良茜!!)」
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