第281話

 「……っ」

 

 妖力の気配視て、物音を聞く事に長けていた村正。盲目であるが故、鬼組の中でも関わろうとする者は少ない。盲目である村正という存在をだと感じ、目元から額に火傷を負っている見た目に嫌悪感が抱かれていた。

 だがしかし、鬼組幹部達は村正を認め、総大将である焔鬼こと焔ですら認めていた様子に奇妙さすらも感じていたのだろう。何も見えないはずの光の無い目を持つ村正は、擦れ違う妖怪達や人間、周囲にある物全てが見えているかのように動いていた。

 足音や風の音を把握し物の位置を把握し、生き物は妖力が気配となって把握しているからだ。肉眼で確認出来ない村正の視界は、サーモグラフィーのように妖力が濃い薄いで視えているのだ。


 「ぐっ……(まったく視えなかったでござる)」


 だがその妖力も、気配も把握する事が出来なかったからだろう。村正が自身の片肩から出る血飛沫を押さえつつ、表情を歪めて背後にある気配へ刀を向ける。

 折れてしまっている刀を向けられた覇鬼は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて告げた。


 「刀は折れたが、未だ心は折れぬか。ククク、良いぞ。もっと世を楽しませろ!」


 そう告げて地面を蹴った覇鬼に対し、村正は短く息を吐いて呟いた。


 「久し振りにやるでござる……」

 「??」


 その瞬間、村正の妖力から鋭さを感じ取った覇鬼は動きを止めたのである。見据える覇鬼の視線を向けられている村正は、凄まじくなっていく妖力に包まれたのであった。

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