第28話
『が、餓鬼だぁぁぁぁぁ!!』
『どうして餓鬼が?まだ昼間だぞっ!!!??』
逃げ惑う人々の叫び声を聞きながら、すれ違う人々の間を通り過ぎていく。人間と同じ大きさの小型餓鬼とその小型よりも大きい大型餓鬼を目の前に見据えながら、鬼組幹部の一人である杏嘉が歩いていた。
人々を負っている餓鬼の目の前に立ち塞がった瞬間、餓鬼は動きを止めて目を細めて口を開いた。
『オマエ、邪魔ダナ。何者、ダ?』
大型餓鬼の一体がそう問い掛けたが、杏嘉は目を伏せたまま何も答えなかった。それに不満を感じたのか、餓鬼は大振りに腕を振り下ろそうとした。
『……邪魔者ハ、排除ッ!!』
「邪魔なのは、テメェだ。……デブ」
『グォォォォォォッッ!?』
大型餓鬼が腕を振り下ろした瞬間、直撃したはずの腕が木っ端微塵となり倒れ込んだ。のた打ち回る様子を見下しながら、杏嘉は餓鬼の上に乗って顔面を踏み付けながら吐き捨てるように言った。
「アタイの前に現れたんだ。生きて帰れると思うなよ?雑魚が」
そう吐き捨てた杏嘉は、餓鬼の頭蓋を踏み砕いた。他の餓鬼の事を見据える杏嘉は、餓鬼へ殺気を向けてニヤリと笑みを浮かべて移動した。
瞬時に餓鬼の眼前に迫った杏嘉は、目を見開いて餓鬼の顔面を殴っていく。やがて餓鬼の群れの背後へ出現した杏嘉は振り返らず、小さく息を吐いて呟いた。
「さっさと――死ね」
その瞬間、杏嘉の背後に立っていた餓鬼が木っ端微塵になった。まるで内側から破裂したように死に絶え、周囲に飛び散った血が雨となってその場で降り注いでいた。
そんな紅い雨の中で杏嘉は、目を細めたままその餓鬼達を率いていた者を見据えたのであった。
「出て来たな」
『……ワタシの気配に気付いていましたネ?』
「気付かない方がどうかしてる。さて、アタイの前に現れたんだ。覚悟が出来てんだろうな?」
『覚悟するのは、ワタシじゃなくてアナタ。ワタシの辞書に敗北の二文字はないネ』
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