第29話
餓鬼の群れが何の前触れもなく出現し、幽楽町へ攻め込んで来た。これは何者かが鬼門と同様の物で代用したか、あるいは別の方法で鬼門を復活させたと見るべきだろう。
これはこの町にとって、由々しき事態だと言える状態だ。
『ガァァァァァ!!!』
『余所見、余裕ダナ!』
「否定はしないでござる。拙者、貴殿らを相手にするのは慣れている」
そう呟いて刀を抜き、眼前まで迫った餓鬼の群れを斬り伏せる。仮面を付けた侍のような容姿をしたその者は、鬼組幹部の一人である
刀を納めた瞬間、背後にもう一体の餓鬼が村正に迫る。だがしかし、村正は動こうとせずに口角を上げて呟くのであった。
「――拙者、余裕と申したが。生憎とこの場に来たのは、拙者だけではないのでござるよ」
『っ!?』
餓鬼の攻撃が村正に直撃する寸前、餓鬼の視界が地面によって塞がれた。
「ガハハ、我が友の頼みとあれば任されようではないか!」
『ァァァァァァッ、アァ、頭ガ割レルッッ!!』
「しばし、眠っておれ。我が同胞よ」
『ガハァッ!!』
素手で餓鬼の頭を握り潰したのは、元黒騎士である剛鬼だった。手に浴びた返り血を振り下ろしながら、剛鬼は片手を腰に当てて村正に言うのであった。
「我が来る事は知っていたのか?」
「あれだけ呑み、語ったのだから。分からないはずが無かろう?」
「ガハハ、それもそうだ。それで、首尾はどうなっている?」
「見ての通りでござる。これ程の量の餓鬼でござるから、これを率いている者はかなりの者でござろうな」
「確かにな。どうする?その者を探すか?」
そんな剛鬼の問い掛けに対し、村正は口角を上げて腕を組んだ。目の前に出現し続けている餓鬼の奥を見据え、笑みを浮かべたまま告げるのであった。
その餓鬼の間から見えた存在を真っ直ぐに見つめたまま――。
「探せれば良いが、それは目の前の敵をどうにかしてからでござろうな」
「……なるほど、確かにそうらしい」
「では共に参ろうか、剛鬼殿」
「承知した」
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