第93話

 戯鬼の攻撃を受けてしまった狂鬼は、血飛沫を飛び散らせていた。その様子に空中から待機していた烏丸が、声を荒げて狂鬼に近寄った。


 「狂鬼さんっ!!」

 「ぐっ……騒ぐな。この程度で殺られるつもりはねぇよ」


 流れた血が滴る中、狂鬼は自分の肩を押さえて言った。致命傷にはなっていない事を安堵した烏丸だったが、狂鬼は烏丸を退かして戯鬼の事を見据える。

 睨まれた戯鬼は、ニヤリと笑みを浮かべて口を開いた。


 「その通りだヨ、妖怪。狂鬼はこれでも黒騎士だからネ、心配する必要はないネ」

 

 不敵な笑みを浮かべられ、烏丸はそんな視線に悪寒が走った。全身を舐められたような感覚に襲われ、烏丸は一歩後退して身を引こうとした。

 だがしかし、そんな烏丸へ振り向いた狂鬼は告げた。大斧を地面に突き刺し、後退しようとする烏丸に向かって首を左右に振った。それを見た烏丸は、小さく息を吐きながら引きかけていた足を前に出す。


 「逃げないのかネ?オマエの事は逃がしてあげようト、思ったんだけド」

 「こいつは、あの人が集めた奴らの一人でもある。この程度で怖気付くなら、最初からあの人の背中を追ってねぇだろ」

 「ワタシに勝てるつもりかネ?」

 「勝つさ。知ってるか?……力を驕った奴は、最終的に負けるように出来てるんだぜ?」


 そう告げた狂鬼は、ニヤリと笑みを浮かべて大斧を構えた。その言葉を聞いた戯鬼は、繋げていた左右の袖口を離して言うのであった。


 「――なら、ワタシも本気で殺らないといけないネ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る