第92話

 黒騎士の中でも逸脱した存在である戯鬼。そんな戯鬼と対峙している狂鬼は、警戒しつつも武器を出現させて展開した。複数の武器を操る事が出来る狂鬼は、その複数ある内に通用する武器を模索するつもりなのだろう。

 手斧や槍、出現させた武器を佇む戯鬼に放った。急接近する武器を前に戯鬼は、ニヤリと笑みを浮かべたまま動く様子は無い。だがしかし、動いてないにもかかわらず、全ての武器が何かに阻まれたように地面に落ちた。


 「どうしたのかネ?オマエの力はその程度カ?」

 「はぁ?この程度だった、オレは黒騎士になれてねぇっつの!!」

 

 そう言った狂鬼は戯鬼との距離を詰め、一気に間合いへと入った。戯鬼の詳しい戦闘能力が分からない以上、模索し続けても致命傷を与える事は不可能だと思ったのだろう。

 狂鬼は得意な接近戦へと持ち込み、戯鬼の戦闘能力を計る事にした。様子を伺うにしても、これで倒せるのであれば良い話。そう思った狂鬼は、ある程度の本気を出して武器を振るった。


 「チッ……外したか。見た目の割りに意外と身軽な奴だ」

 「近接戦闘がお好みなラ、ワタシもその提案を従うとしよウ」

 「あ?」


 近接戦闘を申し込んだ狂鬼に対し、一度距離を取った戯鬼はそう言った。その言葉に眉根を寄せた狂鬼だったが、目の前から戯鬼の姿が消えた瞬間に目を見開いた。

 手斧を出現させて構えた途端、目の前に現れた戯鬼の攻撃を防ぐ事に成功した。がしかし、すぐに移動した戯鬼は真横へと回り込み攻撃を繰り出す。

 応戦する狂鬼は防御するのが精一杯の様子だった。そんな状態に苛立ちを覚えたのか、奥歯を噛み締めながら狂鬼は妖力で戯鬼を吹き飛ばした。


 「調子に乗ってんじゃねぇ!!」

 「っ……流石は黒騎士。この程度でハ、余裕のようだネ」

 「当たり前だ。舐めてんのか?」

 「舐めてないヨ。だけド、ワタシの方が強いようダ」

 「なんだと……――っ!?」

 

 戯鬼がそう言った瞬間、狂鬼の上半身の肩部分から血が吹き出したのである。

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