第3話
「がぁ……!がぁ……!」
「相変わらず、うるさい」
「がぁ……あぁぁ、むにゅむにゅ……」
魅夜の前でだらしない格好で寝転がっているのは、鬼組の幹部が一人であり九尾の杏嘉である。ピクピクと耳を揺らし、尻尾もその姿を現している。寝癖が悪い所為で、自動的に九尾化をしてしまっている。
杏嘉は本来、戦う時でしか本当の姿を露見される事は無い。だがしかし、寝ている時は気を抜いているのだろう。
「杏嘉、起きて。皆が待ってる」
「……んん……むにゅむにゅ」
「(むかっ)」
魅夜が起こそうとした瞬間、杏嘉は寝返りを打ってそっぽを向いた。その反応に苛立ちを見せた魅夜は、ニヤリと笑みを浮かべて猫耳を立てた。
そしてキラリと爪をチラつかせた魅夜は、寝ている杏嘉に向かって爪で顔を引っ掻いたのであった。寝ていた杏嘉の叫びが、屋敷中に広がった事は言うまでもないだろう。
「……――ひっでーなぁ、魅夜。アタイの起こし方に殺意を感じたぞ?」
「そのまま死ねば良かったんじゃない?」
「ひっでぇな……何でそんな怒ってるんだよ」
「皆が待ってる」
「皆?皆ってどういう……げっ」
状況を理解出来て居なかったのだろう。スタスタと廊下を歩く魅夜に着いて行くが、襖が開けられた瞬間に全てを理解したようだ。自分の状況を把握した杏嘉に対し、
「寝坊した挙句に定例会議に遅刻するとは、お前さんも偉くなったものじゃのう」
「なんだとテメェ。……今日どっちが強ぇか決めても良いんだぜ?」
「ワシの方が強いと分かっておる以上、そんな無駄な時間を過ごす理由も無いのう。それに今は、大事な会議の時間じゃろう。それを分かって言っておるんじゃろうなぁ?杏嘉」
「ぐっ……遅れてすまなかった、総大将」
そう言いながら杏嘉は座り込み、皆の前で座っている現総大将であるハヤテへ視線を向ける。そんな杏嘉の言葉に対し、諦めた表情を浮かべつつも指摘した。
「何回も言うっスけど、俺は代理であって偽物っス。一時的に纏め役になってるだけっスよ」
やれやれと言わんばかりに首を振り、ハヤテは肩を竦めながら皆に告げた。その言葉を聞いた幹部組は、同じように小さく微笑みつつもハヤテの言葉を待つのであった。
「――何はともあれ、これで全員っスね。それじゃ、定例会議を始めるっスよ」
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