第206話

 「……」


 ――ザザ……ザザ……ザザ……。


 視界が微かに揺れる。あの斧を持った人間……いや、人間なのだろうか。あいつと戦った瞬間、正確にはあいつと向き合った瞬間だ。脳裏に何かが浮かび、オレの中にあるが電撃を走らせた感覚がした。

 どうしてそうなったのかは分からない。だが、あいつが言っていた「憧れた存在」とやらが関係しているのかもしれない。この脳裏に浮かんだ物が何なのか、それを調べる必要がある。


 「……それにしてもあいつ……戦い方が乱暴なのとは裏腹だった。狙いも正確ではあったし、乱暴な戦い方にかかわらずブレもなかった。大した奴だったな」


 ――ッッ!!!


 グラリと視界が揺れ、再び同じ感覚が襲って来た。この脳裏を巡るような感覚と同時に、オレの全身を巡るように走る電撃は一体なんだ。度々襲って来るこの頭痛も、目覚めた時からずっとだ。


 「あれから一年、オレは一体……何者なんだろうな」


 そう呟いたオレは、一年前の事を思い出したのである。

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