第十六夜「桜花爛漫」

第207話

 「――たっぷりとお仕置きしてあげます!」


 急上昇していく妖力を感じながら、目の前の桜鬼を見据える杏嘉。周囲の空気が圧されているのか、桜鬼を中心にして小さな竜巻が発生している。

 砂埃から手で守りながら、杏嘉は拳を強く握り締めて地面を蹴ろうとした。だがその瞬間、杏嘉の足元に無数の方陣が出現したのである。


 「っ!?(いつの間に!)」

 「誰が動いて良いと言った?お前が動きの早い狐なのは理解してるが、その程度で私に勝とうなんて百年早い!!」


 無数の方陣から逃れようとする事は、本気を出した杏嘉であれば回避は可能だろう。だがしかし、避けようと神経を集中させれば……回避出来たとしても、その後の攻撃に対応する事は難しい。

 それを理解している杏嘉だったが、ニヤリと笑みを浮かべて桜鬼を見て告げた。


 「百年って言ったか?生憎だが、アタイにとっちゃ少な過ぎるんだよっ!!」


 そう告げた瞬間、杏嘉は九本の尾を揺らし始める。

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